- | 次の10件

ドブロクとマッコリとワイン [イリーガル]

韓国で飲む、酵母の生きたマッコリが美味しい。
コンビニに売っている、安物のマッコリは人工甘味料入りの気の抜けた味がするが、ちゃんとしたマッコリやさんのマッコリは、酵母が激しく活動していて、スパークリングワインの様で、味わいも素晴らしい。これは、日本ではいわゆるどぶろくに相当するが、日本のどぶろくはマッコリに比べるとかなり濃い。マッコリもどぶろくも原料は元来米だったが、マッコリは現在麦も使用している。これは、一時マッコリ醸造に米の使用が禁止された経緯があるためである。しかし、いずれにしてもどちらもいわゆる米を原料としたどぶろくの一種だ。
現在の、日本の家庭環境は非常に清潔であり、殺菌のための薬品や道具もそろっているので、ちょっとした材料をそろえれば、実はだれでもどぶろくを簡単に作る事ができる。あの、生きた酵母の美味しいお酒が、家庭で簡単に作れるのだ。障害はただ一点、酒税法である。
酒税法は、意外に良く知られていない。自宅でお酒を造ってはいけないんだよね、ということは知っていても、何が違法で何が合法かを良く知っている人は多くない。日本人は、いつのまにかうまく飼い慣らされて、法をちゃんと守って生きるのが正しいとみんな信じて生きている。法を守らないのは悪人で、だから家庭でお酒を造るのは、悪人だという事になる。みんなまじめに、これを守るのだが、果たしてその背景をきちんと理解しているのだろうか?
自宅で酒を造るのは、酒税法違反である。1%以上の濃度のエタノールを醸造すると、酒税を納める義務が発生する。たとえ、自然現象で勝手に発酵してエタノールができたとしても、飲むためにわざわざ醸造しても、いずれの場合も同じ事である。問題は、酒税を払えば良いというのではなく、あらかじめ申請を行い、酒造業者として許可を受けなければ、お酒を造って酒税を納めることができないという点である。そして、この許可を受けるのは一般の個人では不可能に近いのである。つまり、一般の個人は、お酒を造ることができないという事になる。非常に奇妙な話だ。
葡萄を買ってきて、食べずに放置していると、葡萄に付着している酵母により、勝手に糖が分解されてエタノールが発生する。そこに、アルコールを醸造しようという意図が一切無くても、単に放置したのだから、自然現象であるにもかかわらず、これは違法行為になる。おかしな話である。酒税法をちゃんと守るには、こういった自然な発酵現象を厳しく監視し、発酵が起こる前にそれを殺菌する等の処置を施さなければならないという事になる。
こんな理不尽な法律があるのは、今では世界的にも珍しく、日本だけだと良く言われている。多くの日本人には宗教上の制約は無い。本来自由である。にも関わらず、このように個人の自由を束縛する法律を、何の疑問も持たずに受け入れて、それを遵守し、さらには身近にそれを守らない人がいれば、それを非難し、場合によっては通報するという、まさに洗脳されたかのような行為を行う人もいるわけである。
しかし、無知とは怖い物で、アルコールの醸造がいけないのであって、すでにお酒になっている物を買ってきて、そこに少し果汁を加えるなどして飲むのは問題無いはずと思っている人が多い。梅酒に代表される、いわゆる果実酒だ。これは醸造していないから、自由なはずだと。しかし、実際には、梅酒も酒税法違反になる可能性がある。梅酒を個人で楽しむだけでなく、他人に振る舞う行為は、実は違反になる。また、通常アルコール濃度20%程度の焼酎に梅を漬け込むわけだが、それではアルコールが強すぎるという事で、もっとアルコール度数の低い醸造酒などにつけ込む人もいるだろう。実はこれも酒税法違反になる。
このような理不尽な法律になっているのは、かつて酒税が国税に占める割合が高かったころ、非常に高い税率を酒造メーカーに課すために、取引として、個人の醸造を禁止したという背景があるとの事で、つまり、国が効率良く税収を得るための手段として、この法律があるわけである。現在、酒税の割合は非常に低くなり、このようながんじがらめの法律で酒税を徴収する事に、もはや意味は無い。個人の醸造を認めたからといって、多くの人がお酒を買わなくなるとは思えない。これは、自宅でフランス料理を簡単に作れるからと言って、フランス料理店がつぶれてしまうという訳ではないのと、同じ事だと思う。つまり、所詮素人のつくる酒はそれほど美味しい訳が無く、プロの酒造メーカーのお酒の売り上げがそれほど落ちるとは思えない。それでも、この酒税法が改正されずに未だに効力を発揮しているのは、実に不思議なことである。

さて、話が大きくそれたが、何が言いたいかと言えば、美味しいマッコリのようなどぶろくは、簡単に自宅で作れるという話だ。もちろん、酒造メーカーが酵母の生きた美味しいマッコリやどぶろくを安価に販売してくれれば、わざわざ自分で作る気は毛頭無い。しかし、実際にはほとんど販売されておらず、販売されていても、異常に高価であったり、美味しくなかったりして、結局酒屋での購入では満足できないのである。
で、それじゃあ酒税法違反を覚悟して、自分で作るかという事になるわけである。
次回は、ドブロクやワインの作り方を解説しよう。もちろん、この手の解説書は、普通に本屋で買えるし、なんと市立の図書館にも置いてあり、借りることもできる。要するに、どぶろくの作り方を教えること自体は、違法でもなんでも無いわけである。違法なのは、実際に作ることだ。

- | 次の10件

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。